小石原焼・藍釉櫛描皿
太田哲ちゃんが作った藍釉の櫛描皿がこのように焼かれて出来ました。
コバルト顔料を通常用いる釉薬は石灰釉です。色合いは登りの薪木で焼くより、むしろガスや灯油の窯で焼く方が向いています。特に灯油の窯で焼くと、窯内の硫化水素の発生で、釉薬が硫黄化され黄ばみます。濃いコバルトが程よい明るい色調となり易いそうです。
山陰の出西窯などは、近年、このコバルト釉を使った皿が、現代的な生活に合うと若い人達に人気で、その名を馳せています。近代的な生産機材を上手に用いることで、古臭さを基とする民陶に新しい息吹を与えた事例です。
哲三さんの釉薬は、石灰釉でなく、あくまで小石原伝来の土灰釉です。木灰と近場で採れる長石を混ぜて作る、小石原焼や小鹿田焼の基礎釉です。これにコバルト顔料を混ぜて焼くと木炭の中にある強い金属化合物が作用して発色を抑えます。登り窯でもガス窯でも同じ状態の焼き上がりとなるそうです。しかし、それがかえってコバルトの藍色の強さが自然な感じをかもし出してくれて私は好みます。鉄分の錆が発色して、焼き物自体を強く見せてくれます。近代的な釉薬を用いても伝統の力は自然と備わっているかのような存在感を得ます。この皿はそのような物に仕上がったと思いました。
久野恵一 |