丹波立杭 清水俊彦さんのこと
清水俊彦さん、私や彼の親しい人達は「俊ちゃん」と呼んでいます。60歳を越しても、愛称で呼ばれるのは、彼の温厚な人柄と愛くるしい顔、そして丹波の里山弁が、人を分け隔てなく彼の言葉から発せられるからなのでしょう。 京都五条坂・故河井寛次郎の戦後間もない弟子で、師の勧めで丹波の里釜屋という古窯跡に窯を持った、生田和孝氏がおられました。情熱的で眼識力があり、優れた素養を兼ね備えた陶芸家でした。 生田さんは、お米の籾殻を焼いた灰・糠釉を丹波伝統の直炎式窯で焼き、朝鮮陶工が多用して確立した面取り、鎬といった、成形した器物を刃物で削り落として仕上げる技法を、独自の世界で展開した作家です。惜しまれながら20年ほど前に、50歳代の若さで他界されましたが、冴えのある糠釉の趣と鋭い力のある技法は、今も語り草となっています。
俊ちゃんは青年期30歳近くまで、この生田氏の下で修行し、職人として師を手伝っていました。 師から学んだ釉と技法は、彼の手によって今も作り続けられていますが、窯の焼成具合に敏感に左右される釉の為、窯出しされたものには、いいもの、不出来の物と、はっきり選別出来るほど違いがあって、常に焼くには窯元として勇気がいるとのことです。
そんなことで、こちらもたまにしか注文できない物でしたが、8月初旬に窯出しされ、現地で選別した物がようやく入荷しました。遅くなったのはお盆をはさみ、その後彼が理事を務める立杭焼陶業組合が、愛知球博へ実演のため、出張していたからだそうです。 糠釉の焼き上がり具合も大変良く、鎬に技法も力強く、皆上々の出来上がりです。黒釉の掛けられたものもあり、昔ながらのローソク徳利の、小ぶりな大きさも使い易そうです。 白土を化粧掛けしただけのものは、すっきりしてとても気持ちよいもので、推薦します。湯呑の大小、マグカップ、片口、5寸6寸7寸の皿、急須、などがあります。
久野恵一
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