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 哲ちゃんの櫛描皿(福岡県朝倉郡)小石原焼 

  小石原は、福岡県朝倉郡の小村ながら九州を代表する陶器産地で、昔から庶民が日常に使う器を焼いてきました。
 すぐ近くの大分県日田市小鹿田に小石原製陶技術を伝えた兄貴分にあたりますが、小鹿田が未だに10戸の窯元による生産体制を守るの対して、小石原は50戸を超える一大産地に発展しました。
 30年ほど前、私が工芸の世界に入って間もない頃、当時九州では陶工としてその名を馳せていた太田熊雄(故人)と親しくなりました。その熊雄さんから往時の小石原について随分と聞かされたものですが、いずれその時の思い出を混じえて小石原焼について述べるとして、今回は「哲ちゃん」の愛称で呼ばれる小石原の人気者を紹介します。
 
哲ちゃんこと太田熊雄さんの三男哲三さんは現在54才。分家を許されて個人で窯を持ってから30年。私とのつき合いも30年になります。
 哲ちゃんは、佐賀県有田工業高校窯業科で訓練を受け、さらに父の下で厳しい修行をしました。私が知り合った頃の哲っちゃんは、父の窯の職人として休みをとることも許されず、繰り返し繰り返し、陶器づくりに専念していました。そのお陰で、彼の制作する器は寸分の狂いもないほど正確な出来栄えで、しかも仕事は素早く、哲ちゃんは、今の日本を代表する優れた陶工の一人であるといっても過言ではありません。その一貫した仕事ぶりは惚れ惚れするような早さで、そして測ったように均一の製品ができてきます。それが余りに整いすぎているせいか、その評価は意外に低いのが残念です。
上掛けをするまえの皿
 5年ほど前から、哲ちゃんの仕事に縦のストライプが目に付くようになりました。高台をなくし、縁をすっかり払ったやや浅めの中皿類に、縦の線が十数本、勢いよく伸びた斬新で美しい仕事です。
 赤味の強い胎土に白土を化粧掛けして文様を描く技法は北九州・唐津系の古陶によく見られ、指をロクロの回転に沿わせて白土を掻き落とすものや、指や櫛で波文様を描いていくのが一般的ですが、大胆にも縦に線を描いた哲ちゃんの掻き落としは、じつに清新な感じがします。現代的な暮らしにも合う意匠ともいえるでしょう。

 
  白土をたっぷりと上がけし、櫛で描いていきます。      哲ちゃん特製の櫛  

白土をたっぷりと上掛けした胎土を木製の櫛で掻き落とすと、線が細すぎて白土が戻り、せっかくの線を被ってしまいます。そこで哲ちゃんは、四輪駆動車の厚い古タイヤのゴム片を利用してヘラを作り、鋸の刃のように目立てして作った櫛を使うことにしました。なるほど、このヘラならゴムの粘性が白土の覆い被りを遅らせて、細めのストライプを描くことができます。彼は四輪駆動にのめり込んでいて、タイヤにも詳しいいのでそこからヒントを得たのでしょう。そしてなによりも、長い修練から身につけた勘が新たな道具を発見し、新しい技法と文様を作り出したのではないでしょうか。
  小石原焼で用いる釉薬には、透明となる並釉、飴色などになる錆釉が主に使われています。さらに、この頃はやりだしたコバルト顔料を混入する呉須釉も使うようになり、現代人には好まれやすいのか高い人気があるのですが、呉須釉はややもすると化学的な強い色調を焼物に与えます。しかし、焼き上がりの調子によっては、たとえば焼成温度の変化によってくすんだコバルト色になったものがあり、さらに櫛描文様を施すことによって、いやみのない、使ってみたくなる現代的な器が出来上がります。
※櫛描皿は、呉須釉、透明感のある白土そのものの並釉、飴釉の三種類で、大きさは3寸(9cm)から尺(30cm)まで5分きざみで作られます。また、飯茶碗や丸鉢などにも応用できます。

完成した櫛描皿の様子は次回ご紹介致します。お楽しみに!

久野恵一

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