C【稲作と手仕事について】
この度の燭台は、農機具の需要が減ったことがきっかけで始まった手仕事でした。
近代化・機械化に伴うライフスタイルの変化で、かつては必需品だったものが使われなくなる、使われなくなれば作らなくなる、という流れで失われた手仕事は少なくありません。
現在のライフスタイルに合わせて新しいものが生まれるのは、作る側としても使う側としても嬉しいことですが、
かつて日本に西洋食器(コーヒーカップやピッチャーなど)が入ってきてから、日本の窯元で今のような形の良い西洋食器が平常に作られるようになるまでにかかった時間や労力を思うと、
新しいものにそれまで長い間培ってきた伝統や力強さを引き継ぐことはそれほど容易なことではないように思います。
特に、昨年仙台で催された手仕事フォーラムの全国の集いで議題となっていましたが、稲作は長きに渡る日本文化・日本の伝統の幹の部分です。
当然手仕事も、稲作を中心に発展していきました。
その稲作が機械化したり、そもそもお米を輸入に頼って稲作自体をやめてしまったり、そういった事態に陥りつつある今、知らぬ間に日本の手仕事から多くの伝統が消えていくことが危惧されるように思います。
この度の児玉さんにも農機具を打っていた経験があり、その上での、この燭台の仕事です。
「骨格のある仕事」という言い方を久野さんがよくされますが、この素朴で美しい燭台作りを支えているのは、農機具の仕事なのかな、と思ったりもしました。
やはり日本の手仕事における力強さの源には、稲作がひとつ、大きな土台としてあるのでしょうか。
この疑問は、これからいろいろと見ていく中で、少しずつ考えを深めていけたらと思っています。 |